Drama 01 — The Heart of Kanezen

僕らは嘘つき、
かもしれない。

「元気で、なんかおもろい会社にしたいんだよね」

大阪の100年企業、かね善の岡田社長はそう言って笑った。
その笑顔の裏側に、僕は経営者特有の『乾き』を見た。

年商100億円以上の企業であり、何代も続いている会社を背負い、全拠点の社員を守らなくてはいけない。
社長という生き物は、いつだって「元気なフリ」の天才で、「おもろいフリ」の達人だ。
そう、僕ら経営者は、嘘つきだ。

社員の前で、家族の前で、そして自分自身にさえ、嘘をつき続けている毎日。
だからこそ、岡田社長はマミ山本の「普通じゃないアート」を求めたんだと思う。

綺麗に整えられたフェイクの緑じゃない。
そこにあるのは、植物の叫びであり、魂の脈動だ。
岡田社長が求めていたのは、オフィスの装飾ではなく、自分の「嘘」を唯一脱ぎ捨てられる、剥き出しの聖域だった。

だが、事件は施工中に起きた。
ある社員の一言が、現場の空気を変えた。

「……これだと、社長室だけ。わたしたちと心の距離が離れてしまいませんか?」

その社員は、マミ山本が手がけるグリーン装飾の流れを見つめていた。

「社長室の中だけを綺麗にするのは、ちょっと違和感があります。
社長室から、わたしたちがいる執務室まで、ずっとこの緑を繋いでほしいんです。
社長とわたしたちは、このアートで繋がっていたいんです。」

……僕は、涙が出そうになった。

社長が独りで戦っていることを、社員は知っていたんだ。
社長がついてきた「元気でおもろい」という嘘を、社員は愛し、そして共に背負おうとしていた。

岡田社長は、すぐに追加発注してくれた。
マミは無言で頷き、設計図を破り捨てた。

当初の計画にはなかった、社長室の重厚な扉を跨ぎ、執務室へと力強く伸びていくグリーンの大蛇。
それは、経営者の孤独な志と、社員の信頼を物理的に結びつける『血管』になった。

完成したあの日、空間に流れていたのは「装飾」じゃない。
嘘をつき続けてきた一人の男と、それを支える仲間たちの『真実の体温』だった。

僕は、僕らの価値は「組織の熱量を上げる」と伝えています。
だけど、「組織の熱量が可視化される」
それが正しい表現かもしれない。

でも、これだけは言える。
僕らがかね善で作ったのは、単なるアートじゃない。
「嘘つきな社長」が、世界で一番素直になれる場所。
そして、社員がその背中を、言葉を超えて支え続けられる『一体感の再認識』だ。

その翌年、かね善は200億の壁を突き破り、今も前進を続けている。

本当に、元気でおもろい会社になったんだ。